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対局後、再度の会議

対局中のことは、ニコ生で見えた分については詳細省略。見えなかった部分だけ少し書いておきましょう。

対局開始後は基本的に指し手入力以外は一切マシンをいじりませんでした。へたにいじってコケたりすると困るので。唯一いじったのが昼休み。1時間もほっとくとK-Shogiを動かしているノートPCがスリープしてしまいますが、スリープしないよう設定を変更しておくのを忘れてました。まったく、細心の注意を払ったつもりでも、どっかに抜けがあるものです。このPCはF社提供のものです。最初は私のを使う予定だったのですが、F社広報部が「背面のロゴが映える機種にしたい」とか言ったらしい^^; このころ私は自分ではXPを使ってたのですが、このPCはWin7で、わからなかったので詳しい人にスリープ設定変更をお願いしました。普段なら適当にいじって自分でやるところですが、万が一にでもコケさせられなかったので。

対局時には通常、ひとつのウィンドウに評価値を出すようにします。ですがこのときは、対局開始時に緊張してたのか、評価値ウィンドウを出すのを忘れてました。それで、対局中は私は評価値が見えませんでした。なので、アマチュア初段程度の棋力で局面を判断しながら見てました。後で聞いたら、別に席を立って検討室に行ってもよかったですよ、ということでしたが、やっぱり米長さんが真剣に考えてる横で歩きまわるのもちょっと気が引けました。第二回のときは塚田さんはしょっちゅう席を立ってましたが(たぶんたばこ吸ってたと思われる)、米長さんはずっと盤の前に座ってたように記憶してます。

当日の棋譜は、たとえばここにあります。
http://toybox.tea-nifty.com/memo/2011/10/post-8157.html
午前中は千日手模様の展開になり、ルールで決めてなかったのでひやっとしたのは前に書いた通り。ただ、おそらくソフトは千日手は避けるだろうなとは思っていました。後手側の陣形はソフトは絶対評価しない形なので、評価的には先手優勢(プラス)のはず。千日手はプラマイゼロと評価するので、プラスの方を選ぶはずだからです。実際、わーい飛車をやりながらも陣形は少しずつ変わっており、4回同一局面は避けようとしていたはずです。

はじめて「勝ったかな」と思ったのは、82手め△4四歩のところ。その前に、ずっと角を隠居させて衝突を避けていた米長さんが△3四歩と角道を開けました。これを見てボンクラーズが角をぶつけると、やっぱり角道を止めた、という手でした。私は棋力初段くらいで、評価値見てないと、この局面がいいかどうかは正直さっぱりわかりません。ただ24をずっと見ていて、こういうのが「勝ちパターン」だというのはなんとなくわかっていました。戦いが始まるとき、人間は読み抜けの可能性を心配していて、どうしても迷いが生じる。このときも、いったん角をぶつけて勝負する気になったものの、読んでみてやっぱり戦いは自信なくなった、というのではなかったかと思います。で、こういう人間が迷うような局面は、だいたいソフトの方が深く読んでるんですよ。人間が迷ったらソフトの勝ち。かなり乱暴な言い方ですが、八割方合ってるんじゃないかなと思ってます。

「パターンだから」でなく、自分の棋力でもようやく「これはさすがにこちらがいいよな…」と思ったのは95手め▲6五歩あたりからですが、後でタイムシフト見たらこの辺はプロは検討もう打ち切ってる状況でした。

さて対局終了後、記者会見までは1時間以上待たされたと思います。最初の3、40分は、何もせずぼーっとしてたり雑談したりしてました。私は対局中は単なるオペレータで特に何もしてたわけではないですが、やはり対局室は緊張しますので、精神的には疲れていました。それからまたRさんが来て「打合せがあるので来てください」とのこと。行ってみると、朝のメンバーに加え、ドワンゴ川上会長もいました。あともう少しメンバー増えてたような気がしますが、ちょっと誰だったか思いだせません。で、米長さんから「来年のことだが、一度に5戦やる団体戦に変えようと思う。川上さんも賛同してる。それで皆さんいいですね」と言い出しました。第2回の形式の原型がこのときはじめて出てきたわけです。その前の30分ほどに米長さん・川上さんが会議をして、そういう提案が出てきたようでした。

私にも意見を聞かれました。といってもそれまで「1年に1戦、5年で5戦」と聞いており、朝の会議でもそのこと自体には文句つけたわけではないので、こちらも相当面喰らっていて、すぐには考えがまとまりません。米長さんだって対局終了までは朝の会議のこと知らなかったはずなので、この3、40分の間に一気に方針ががらっと変わったことになります。それで、「私としては特に問題ないような気もしますが、別に30分であせって決める必要はないのでは?私が朝要求したのは『ボンクラーズを排除しないこと』だけなので、その点だけ明らかにしてもらえれば、形式は今決めなくても後日再検討、でもいいのではないですか」と言いました。すると彼は「要求って何だ?」と。で私が谷川氏に「朝の合意の紙、見せてないんですか?」と聞くと、首を横に振る。米長さんがそれを見て「何それ?ちょっと見せてよ」と言って、はじめて合意の紙を米長さんに見せたらしい。それを見せないで一体何を話してたんだ、と私は首をかしげてましたが、それはさておき。

すると川上さんが「伊藤さんとしては、形式については、まあ言ってしまえば口を出す筋合いではないですよね。それは連盟がそう決めるというならそれでいいんじゃないですか?」と発言。それはたしかにその通りなんです。最初の「1年に1戦、5年で5戦」というのも、私の考えとしては正直興行としてはばかげてると思ってましたが、それはそれこそ主催者の決めることなので、私が口を出す筋合いではない。だからこそ朝もその点は触れず、あくまで「ボンクラーズ排除」だけを、おかしいと批難したわけです。

川上さんはこの案非常に気に入ってたようで、どうやら私に横やり入れられては困ると思っている様子でした。ニコ生の来場者数がよかったので乗り気になったのでしょうか。私としてもスポンサーの意見は尊重しなくてはなりません。また、突然の変更案で、何か罠でもあるのかとちらっと頭をかすめましたが、疲れた頭で短い時間に急いで考えるに、開発者にとってまずい要素はなさそうに思えました。なので「そうですね。あせって決める必要はないと個人的には思いますけど、どうするかはそちらにおまかせします」と引き下がりました。こうして、第2回電王戦の大枠が決定しました。その後の記者会見でそういう内容の発表がなされたのは、ニコ生で見られた通りです。その背景にはこういう経緯があった、というわけです。

私としては「ボンクラーズ排除」だけを訂正しようとしたのですが、副作用として結果的に団体戦の形式自体が5年越しから一気に一度の対局に変わることになりました。私の狙いとは異なった形になりましたが、結果的にはやはりよかったのでしょうね。

もし私がおとなしくして文句言ってなかったらどうなっていたか?当初の5年で5対5になってたのでしょうが、これ実は大きな問題があります。開発者が出たがらない。WCSC決勝クラスはみんな私と同じく考えるでしょうから、2回め・3回めあたりは名人に挑戦するためには誰も出たがりません。一方10-20位くらいのソフトは、「今のうちに、出れるチャンスに出てみようか」と考えて立候補する。これで興行になるのか?このあたりも、連盟は開発者がどう考えるか、どう反応するかといったことをまるで考えてないな、と思えます。

本譜では13年に一気に大勢が決し、14年は新たな段階に入った。開発者・棋士・ファンのいずれにとっても、これはやっぱりよいことだったんじゃないかな、と思います。

ちなみに、なぜ朝の会議の話から突然5対5案が出てきたのか?なんですが、これがわからないんですよね。私なりに考えられる推測はいくつかあるのですが、どれもいまいちしっくり来ない気がするので、書くのはやめておきます。

記者会見の後、関係者で将棋会館の近くの店で打ち上げをしました。私は前日までは排除の件で腹を立てていましたが、無事主張を通したので、このときは腹を立てることもなく普段通りの気持ちでした。米長さんの方も、内心どう思っていたかわかりませんが、少なくとも表面上は私と普通に話していました。いろいろ話すなかで、来年の電王戦はという話になり、「どんな人を出すんですか」と聞いてみたところ、「大将がB1くらいかな」とのこと。予想していたとはいえ、「ああ、やっぱり名人は3、4年は出てこないんだろうな」と思いました。また、渡辺竜王(当時)も向かいに座ってまして、かなり話しました。24については「3300は人間には絶対無理です」と言ってまして、早指しに関しては名人越えのお墨付きをいただきました。長時間勝負については特に言及ありませんでしたが。

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コメント

なぜ5対5にしたのかですが、下位の弱いソフト相手ならば勝てると考えたからではないでしょうか
実際に阿部四段が5位の習甦に勝ち星をあげています
本来ならば最強のソフトと五番勝負をすればいいところを、弱いソフトを混ぜることで最悪でも勝ち越せばプロの威厳を保てると
将棋連盟が考えそうなことだとおもいます
実際にはプロのボロ負けで格付けが終わってしまい、今年からはお情けのハンデ戦に入ったわけですが
この分では来年は興行にならないので、タイトルホルダーが出ないのであれば今年で電王戦は自然消滅ということになりそうです

当時、会見のために会見場に入ってくる米長会長のうしろで谷川さんが凄く嫌そうな顔というか困った顔をしていたのが印象的でした。

その後の会見で5vs5の話を聞いて、谷川さんは嫌だったんだろうなあという印象を受けましたね。
もし5人一気に負けてしまったらどうすんだ?って私も思いましたから。
なので、たぶん米長会長の感性で決めちゃったんじゃないかなって思いますね。
川上会長からの提案もあったかもしれませんが。

なので伊藤さんはこの決定になんら関係ないんじゃないかと思います。

 
伊藤さんの文章の切れ味が鈍くなると、ツッコむほうもやりにくいですね。もちろん伊藤さんを叩きたいのではなくて、事実を明快になればと思って言う話です。

まず、伊藤さんはドワンゴ川上会長や連盟の専務理事や理事の顔を潰した可能性がある。

Dさんから川上会長に「・・・のようにボンクラーズ伊藤と連盟がケンカになっている」という報告が入っただろうことは、社会人なら容易に推測できます。推測ですがこれは間違いないでしょう。で、川上会長が八方丸く収まり興行的にもプラスになるように5vs5の団体戦をやろうと米長会長をうまく説得した。

伊藤さんは「形式については、まあ言ってしまえば口を出す筋合いではない」のですから、すんなり全開一致でGOがでてお開きでよかったところ、連盟に飲ませた約束を伊藤さんがばらしてしまい、「お前空気よめよ」(川上・谷川)とイラッとしてそうな光景が想像されます。

川上会長の説得以下は想像です。

渡辺竜王(当時)は「3300は人間には絶対無理です」という"事実"を実際に述べたのでしょう。"事実を述べただけ"はこのBlogにもよく登場するし何の問題もありません。

名人越えついては、「棋力はレーティングで測るものだ」という伊藤さんの判断基準に照らして(その判断基準は正しいと思うものの)、人間には無理=名人にも無理=ボンクラーズは名人より上、と伊藤さん自身が判断しているのではないですか。

渡辺竜王(当時)が「ボンクラーズは名人を超えた」という言葉そのものを実際に述べたわけではないですよね? 渡辺竜王「3300は人間には絶対無理」と伊藤「棋力はレーティングで測るもの」という両方をミックスして、ボンクラーズは名人を超えたと判断したのは伊藤さんですね。

「名人越えのお墨付きをいただきました」と伊藤氏は言っていますが、渡辺竜王(当時)が実際に発言していないことを、伊藤さんが自分の考えを付け足して意訳していることになり、Blog全体の信用性に影響します。お気をつけて

団体戦にしたのは多分この段階でプロ棋士が真剣勝負で勝てる見込みが相当低くなっているという判断でしょうか
ならばまだ勝てる可能性が高いうちに多くの試合をしたほうが良いと
しかも五つ別のソフトがでるわけですから
しかし今回習甦があれだけ強かったですからね~
なかなか難しい時代になってきたのかもですね

ブログ楽しく拝読しております。公開デモの運用は気が張りますね。
ところで団体戦の件、どこにでたインタビューかは忘れましたが、船江先生は当日朝米長会長から「来年は団体戦」と突然いわれたと語っておられました。双方が内実をどう了解していたかは不明ですが、連盟側の意思疎通はあちこちでビザンチン故障している気はします。

前回のGPSに続いて今回はポナンザがA級リーグ入りを果たしました。

これで3つのソフトがA級になった訳ですね。

米長さんの対局当時と比べるとまだ2年しか経っていませんが世の中の情勢もすっかり変わりました。

もはやだれもプロ棋士有利とは見ていないでありましょう。


さて今回のポナンザは一年前のクラスターレベルをデスクトップ1台で実現してしまった模様です。

そのポナンザをクラスターで動かしたらどうなるのでしょうか?

やっぱりGPS(670)並みの強さになるのでしょうね。

もはやソフトは人を超えて仙人のレベルまで行ってしまった様であります。

一度に5対5の対戦を決めたのは誰なのか、これは谷川会長でしょうね。9時の会議で米長会長に事の顛末を知らせず、独断専行したのを見ても伊藤さんとの交渉の全権を任されていたんでしょう。ただ、伊藤さんの撤退案で恥をかかされたわけですが、会長代行では腹を括ってるわけでは無いので押しに弱い独りよがりな戦略になりがちです。後に流れた電王戦を人質に取られたって噂、弱い人間ならそう言って責任を伊藤さんに押し付け恥を隠しますね。全く典型的なパターンです。伊藤さんの文章の通り川上氏の同意も自然で、全体の流れとしてもどういう仕組みにするかは連盟に主導権があるようですからドワンゴからの提案ではまとまってない話を根幹から壊しかねないと思います。

>その2
【早指し】に関しては名人越えのお墨付きをいただきました。と書いてありますよ?読解力がない人は静かに読むだけにしたほうがいいですよ。

5対5団体戦の経緯は「ドキュメント電王戦」を読んでね、と言えば良いのではないでしょうかw
今となっては貴重な、第2回後の伊藤さんのインタビューも掲載されている本ですし。
開発者と対局者の棋士のインタビューが半々で、他に佐藤大輔さんや川上会長のインタビューがある等
棋士以外の視点や考えにも等しくスポットが当たっていて、電王戦全体をバランス良く考えるのに最適の本だと思います。
アマゾンレビューでは将棋用語の誤字で評価が低くなってましたが、棋力はそれなりにある私ですが殆んど気になりませんでした。
文句無しの★5つ、とても充実した内容の本だと思われます。
本では団体戦決定の部分に触れた内容は少なく、表に出てる情報が全て正しいとは限りませんから、あくまで一説としてですが。
ただ、その1さんの仮説には驚きました。川上会長が、米長前会長と伊藤さんが仲違いしないように
また、谷川会長の責任にならないように、約束を表に出さずとも皆が納得する、団体戦5人対5ソフトの形式を思い付いた。
それが、あの短い時間での閃きならばちょっと真似出来ません。とても想像出来ませんね。
約束の話が今後も表に出ないように、気を回して団体戦を提案した、とまでは自分では絶対気付ける気がしません。
伊藤さんは対局で疲れてなければ気付けたかもしれませんが、私なら間違いなく米長前会長の前で約束の話出してますね。
やっぱり川上会長はとんでもなく頭が回る人だと想像されます。

機関紙で個人を中傷、話し合いも拒否はやっぱり良くないよな。
話し合い拒否は特に良くない。

久しぶりにTSで会見を見ましたが、この記事を読んでから見ると、おもしろかったです。1年に5対5の対戦についてつっこまれても、うまく記者に答える米長先生はさすがでした。逆に、ボンクラーズの勝利について感想を聞かれ、言葉につまる伊藤さんは、公の場で話すことにまだ慣れてなかったのかなと思いました。ニコ動の電王戦のTSは今月でかなり削除されるみたいですが、一次情報の記録としては重要だと思えますので残念です。

伊藤さんは、谷川さんに否定の疑問文で聞いていますが、日本だと「いいえ」は、見せていることになるはずですよねw
結局、米長さんに見せていないわけですが、それなのにボンクラーズが出場できる案に変わったということは、ボンクラーズを排除するつもりで案を決めていたという前提が崩れませんか?
もし同意書を見せていて、伊藤さんに有利に変更されたら、交渉が上手くいったということになりますが、同意書は全く関係なかったわけですよね?
伊藤さんは「これがわからない」と述べていますが、そもそも前提がおかしかった可能性はないのでしょうか?
ただし、ボンクラーズを排除しようとしていたのが事実で、別の理由で変更された可能性もありますが、単なる米長さんの気まぐれで進んでいた可能性もあるのではないかと。

あと、私には、川上さんの発言は失礼に思えました。
口を出す筋合いはあるでしょ。
決定権がないのというだけで、発言する権利はある。
だって、意見を聞いてきたのは、そっち(連盟も主催者)なんだからw
ああいう川上さんの態度が、開発者軽視につながっている気がするんですけどねえ。

ところで、裁判敗訴になったというのは本当ですか??

??まだ数か月はかかると思いますよ。裁判は時間のかかるものです。

今年のコンピューター選手権には出場されないのでしょうか?

伊藤さん一人で頑張っておられるけど、主だった開発者(15名位?)の回想やいろんなご意見や分析を折り込んだ、ここ15年位のcom将棋進化のまとめ本を出版して欲しい。愚直で有りのままでボリュームたっぷりの内容がいいと思うんです。面白そうだし未来への価値もありそう。

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