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すみませんで済めば裁判所要らねえんだよ

6/24の打ち合わせ後に家に帰ったその夜、弁護士さんから「将棋連盟に送付しました」とメールが来ました。

送った事実とその内容をのちの裁判に備えて記録に残すため、内容証明郵便で送るのですが、これ、Webでできるんだそうです。作業は弁護士さんがやるので私が直接見たことはないんですが、郵便局のサイトで文書のpdfだかをアップロードし、住所氏名等を入力すれば、郵便局に行くことなく送れるそうです。郵便局側で印刷して届けてくれるんですかね。

全然関係ないですけど、年賀状もこんなふうにできないんでしょうか。デザインを決めて、住所録をアップロードすれば一斉に送れる、とか。紙のはがき買って自分で印刷して、とか大変じゃないですか。郵便局としても、現地で印刷すれば集荷や配送のコストが省けるし、地球にも優しいし。いやすみません、話飛びました。

ということで、示談交渉開始です。6/24夜に送って、むこうに届いたのはたぶん翌日でしょうね。文書ではいちおう2週間以内にと区切ってはいますが、最初の返信は11日後の7/5で、「代理人(=弁護士)をつけた。もう少し待って」だけです。2週間過ぎても回答は来ません。

こちらが「2週間期限」と書いたところで、別にむこうに従う義務はないといえばないわけです。もちろんあんまり遅れるようなら、こちらも「先方に対話の意志が見られない」として即提訴、という手もありますが、数日程度の遅れで提訴しては、裁判所から「事前に解決する最善の努力をしていない」などと思われかねません。こちらとしては、結局提訴するにしても、「できるだけ平和に解決する方法を模索したが、先方が応じなかったため、やむなく提訴に至った」という形にする方が、裁判官の心証もよいでしょう。

4日遅れの7/12、ようやく最初の回答が届きます。次のようなものでした。

Tuuchijul11amod3

Tuuchijul11bmod3


これも内容証明郵便で来ています。むこうは7/11に出しています。

内容に入る前に、まず先方の弁護士のメンツから。表紙ページは載せませんが、代理人として3人が名を連ねていまして、トップに名前があるのは宗像紀夫氏でした。将棋連盟の法律顧問です(参考:http://www.law-pro.jp/weblog/cat41/
ググってみると、この人、法曹界ではけっこう大物なようです。安倍総理のブレーンとかいう話もありました。あとの2人はA弁護士とB弁護士、としておきます。

実はこの後のやりとりでは、宗像氏は全く出てきません。法律顧問と言っても名前を貸してただけなのか、はたまたこの件では勝ち目がないと思って手を出さなかったのかはわかりませんが。A弁護士とB弁護士は同じ事務所の所属で、B弁護士の方は見習いなのか裁判ではほとんど発言していません。実質的にA弁護士が取りしきっていました。なお2人ともけっこう若めの女性です。

後になりますが、裁判官もマイナビ弁護士も2人組で、ベテランと若手の組合せのようでした。こうやってOJTみたいな感じで若手に経験させるのがこの世界の流儀なのかな、などと思っていました。

最初、大物弁護士が出てきたことで、弁護士の派閥みたいな関係で、うちの弁護士さんの方にあらぬ圧力をかけてきたりしないんだろうか?などとちらっと思いましたが、弁護士法とか弁護士職務規程とかいうものがあり、そういう行為は禁止されていて、下手にやると懲戒になって資格を剥奪されることもあるそうです。まあ人間のことなのでゼロではないでしょうが、そういう心配はほとんどしなくてよいらしいです。

さて内容の方ですが、次の4点でこちらとしては全く受け入れられないものでした。

1)謝罪の姿勢が見られない。「教養がない」と書いておいて「侮辱する気はなかった、誤解があったならすまない」は通用しない。「侮辱する気で書いた。今は反省している」でないとダメ。この文は、侮辱ではなく誤解だとする言い訳としか受け取れない。また「慰謝料支払いの法的義務はない」も、自分らの過ちの重さを過小評価しようとしている。

2)内舘氏のみに責任をなすりつけていて、連盟の責任に対してまったく言及がない。発行者である連盟が主たる謝罪者であるべき。

3)こちらに非礼な言動があったとしている。「つまらない将棋」発言は羽生さんらも使う表現で、こちらに非礼な言動は一切なかった。落ち度は100%連盟・内舘氏側にある。その点を認めないのは、謝罪どころかこちらへの批判。

4)賠償金ゼロは、こちらの受けた損害を認めていないことになる。それは、自分らの犯した過ちを認めていないのと同義で、謝罪の意志がないとしか考えられない。

1)~3)は説明不要と思いますが、4)について少し補足します。裁判について人と話していると、「むこうが最初から謝ってたらお金までは取らないつもりだったんでしょ?」と言う人が時々いました。これは違います。この件に対する賠償金には、(A)こちらの社会的評価を低下させられた損害に対する賠償、(B)侮辱的表現でこちらの感情を傷つけたことに対する慰謝料(文字通り、「慰め、謝る」ため)、の2つの意味があります。このうち(B)の慰謝分についてはたしかに、むこうが真摯に謝罪するならばゼロにしていた可能性はあります(結局「真摯な謝罪」はなかったですけど、仮定として)。ですが(A)については、現実としてこちらは将棋世界記事によって損害を受けているわけです。その損害については賠償させるのが当然です。ですから、金銭ゼロの解決というのはまったくありえないことです。

たとえ話をしましょう。あなたの車が駐車場で、ヤンキーなお兄さんたちにいたずらされて傷つけられたとしましょう。塗装を傷つけ、タイヤパンクさせた、とか。で、たまたまあなたがそのいたずらの現場を通りかかり、お兄さんたちをつかまえて一喝したとしましょう。お兄さんたちはシュンとして、反省している様子だとします。このとき、あなたが心優しい人なら「塗装とタイヤの修理・交換代だけは払え。そしたら警察には突き出さないでおいてやる」とは言うかもしれません。これが、上の「(A)だけ払え。(B)はゼロ」にあたります。ですが、「修理・交換代はこっちが持つから、お前たちは帰っていい」とはよっぽどお金持ちでないかぎりたぶん言わないのではないでしょうか。それと同じことです。

まして、こっちでなくむこうから「俺たち反省はしてるから、修理代払う必要はないよね?」などと言ってきたら、はァ?何寝言言ってんのお前?となるでしょう。今回の連盟の文章は、まさにこれと同じことを言ってるわけです。本心では謝罪するつもりなどさらさらなく、金を払わずに済ますため形だけ謝っとこう、という態度としか思えません。

あと直接の争点ではないですが、「協力関係をもって尽力してきたものと認識 …… 当惑しております」もふざけてますね。一体どの口が言ってるのか。協力してきたのに突然批判され当惑してるのは明らかにこちらなのですが。

そういうわけで、この通知書はこちらとしては全く受け入れられない、論外のものでした。謝る気が少しも感じられない。

前回のこちらの主張と、今回の連盟の主張、結局最後までどちらもほとんど主張を変えず、真っ向からぶつかりあったままでした。最後にはこちらの主張がほぼ認められて、和解で謝罪と賠償を強制されるのですが、和解内容がほぼ決まった後もまだ連盟は「賠償を支払う法的義務はないんだ」と叫び続けていました。現実を直視できない人たちって哀れですね。

さてしかし、まだこの時点では、むこうの文面が文字通りむこうの真意だと捉えるのは早計です。弁護士というのはある意味交渉が商売なので、あの手この手で交渉を有利に進めようとしてくる人もいます。最終的には謝罪するつもりでも、最初は「いやお前らにも非はあるだろう」のような形でジャブを放ち、少しでも相手から妥協を引き出そうとする手口もあります。

また、連盟の利益と弁護士の利益というのが微妙に違います。連盟と弁護士の契約(報酬体系)がどうなっているかはこちらにはわかりませんが、支払う賠償金額が減るほど報酬額が増えることは間違いないでしょう。ですので弁護士としては、単純に賠償金額をできるだけ減らすようにするのが自らの儲けを最大にする戦略になります。ですが連盟にとっては、必ずしも賠償金額が全てではありません。裁判になってマスコミやネットに書かれることによる「風評被害」を考慮するなら、裁判で予想される賠償金より多少高い額を払っても和解したい、ということもありうるでしょう。ですがこちらと直接接触するのは連盟でなく弁護士なので、連盟は穏便に済ませようとしているのに弁護士が強硬な姿勢をとっている、という可能性もこの時点ではまだ無視はできませんでした。

もちろんこれ、弁護士としてはほんとはやっちゃまずいです。ですが残念ながら弁護士も営利を追求しますので、このようなことも起こりえる、ということです。

さて、7/17にまた弁護士さんと打合せし、対応を協議しました。むこうの真意がまだわからないので、まずは話し合いを提案しよう、という方針になりました。また、できれば弁護士だけでなく、私も連盟側の会長なり理事なりも出た方がよいのではないかと思いました。このときはまだ連盟側の姿勢がこちらにわかっていなくて、まさかむこうがこちらをそれほど恨んでいるなどとは思っていませんでした。なので、谷川会長とも何度か話したこともあるし、上に書いたとおり、弁護士を経由した話し合いでは話が歪められる可能性もあると思ったので、直接話した方が話が早いのではないかと考えていました。

ただ話し合いの前に、そもそも将棋世界にあの記事が載った経緯と判断を知っておきたいと思い、それをまず聞くことにしました。将棋世界の編集はマイナビが行っているため、連盟は掲載には実はノータッチだった可能性もあるでしょう。ですので、話し合いをする前に、

・事前に連盟はこの内容で記事が載ることを知っていたか
・知っていたなら、なぜ掲載を止めなかったのか

を教えてほしい、その後で話し合いをしたい、という申し入れをすることにしました。打合せは夜にやっているので、翌日弁護士さんが相手の弁護士に電話で聞いてみる、ということにしました。前2通は内容証明郵便でしたが、全部これでやるわけではなく、要所以外は電話やFAXも使用します。

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コメント

・「現実としてこちらは将棋世界記事によって損害を受けているわけです」とありますが、伊藤さんは金銭的損害を受けたのでしょうか?

・「連盟はこの内容で記事が載ることを知っていたか」とありますが、「連盟」というのは誰を指すのでしょうか?連盟職員のうち一人でも知っていれば連盟が知っていたことになるのでしょうか?

更新お疲れさまです。
理事である片上さんは、東大法学部卒ですから、単に将棋が強いだけではなく、法律(や、一般常識?)にも詳しいはず。
この件でどう伊藤さんと関わったのか、興味があります。

「馬鹿野郎!」
「なんでそんなことを言われなきゃならないんだ!」
「なんでそんなことを言うの?」
「???」
というような奇々怪々なやり取りですね。連盟は自分の機関誌で誰に対して何を書こうと、一切黙っていろとでも言いたいのでしょうかね。

宗像氏は、明らかに、逃げましたね。私もそう思います。あとのお二人の女性弁護人の方、お気の毒。なんのための「顧問」弁護士なのだろう。

文中の「まさかむこうがこちらをそれほど恨んでいるなどとは」の一節はまだ謎です。今後わかることでしょう。

内容証明がwebで出来るとは。役立つ機会があまりあって欲しくない豆知識を知りました。
賠償を支払う法的義務がないと最後まで叫んでいたのは、現実を直視できないんじゃなくて
絶対に相手の主張を認めたくなかったからじゃないんですか。または主張を認めた記録を残したくないか。
他には、どんな物的証拠があっても大体弁護側の無罪主張から始まる刑事裁判のように、裁判の戦略として定跡だった可能性も有り得るのでは。
いずれにせよ、法律を理解してない主張を叫び続ける情けなさは、全く変わりませんけれども。

攻撃された組織は防衛本能で反論するだけのことです。
個人の意図など難しく考える必要はありません。

「まさかむこうがこちらをそれほど恨んでいるなどとは」
なんとなく想像がつきますね。

たとえばブログに記事を書いて、意図が伝わっていないと感じた場合、
「難しかった?」と聞くと恨みを買います。
「私の説明に至らないところがあったため意図が上手く伝わらなかったようです。私が言いたかったことは・・・」と説明すればそのような恨みは買いません。

つまり事実は事実なんだからそのまま伝えれば正しいとはならないということですね。

たとえば、「ソフトの方もかなり強くなってまして万が一にも名人に勝ってしまうレベルにまで来ています。米長さんに勝ってしまうとそちらにもいろいろ大変なことになってしまうんじゃないかと心配なんですけど大丈夫なんでしょうか?チェスの方はその点は克服してるので、将棋の方も大丈夫だとは思っているんですけど、チェスと将棋では文化も違いますし、その辺は部外者の私には計り知れないものがあるので・・・。もちろんソフトは私の手を離れて計算結果を出すだけなのでなんともしがたい所ですが。」などという対応をすればそんなに恨みは買わなかったような気がしますね。
まあ低学歴の私の考えることですから的外れかもしれません^^;

とおりすがりです。
(この記事のみ)読みました。

少し思うに、立証部分の動画の表現法ですが

(例)
1、***動画の『:::というタイトル』の1:39から3:50まで
http://www***********

という風に示されると、よりよくなります。

動画で公開されている、だけでは厳しい気がします。

なお、年賀状ですが、最近はWEBでも可能です。
住所録などを郵便局に持っていくだけ、らしいです。
WEBでもできますが、郵便局で確認してみてください。
https://print.shop.jp-network.japanpost.jp/nenga
(一応参考まで)

また、内容証明ですが、WEBの場合は、たまにお日にちがかかります。
緊急の場合は、郵便局のほうが現状早いです。(ただし、文字数は減りますが)

最近、【あちゃー発言して(されて)しまった】ということが多いようです。
で、それを活字にされ、わーわーとなってしまう。
でも、(どういう形かわかりませんが)動画配信までなっているのをどうのこうの言っても仕方がないですよね。そういう意味ではおかしな時代になりました。

最近私自身文書が下手になり大変ですが、今後ともご活躍されるよう願っております。

伊藤さんは
「プロ棋士制度の運営者は外部の人間であった方がよい」
と思います?

>「プロ棋士制度の運営者は外部の人間であった方がよい」

はい。非常に強くそう思います。人によって多少の差はありますが、やはり全般的に棋士は組織運営を行なうような社会的経験が欠けているのはいかんともしがたいと思います。

非表示希望ということでコメントいただきましたが、「職業を通じてマネジメント等を身につける機会が、通常の会社と異なり棋士の場合はない」という意味です。職業の特性上しかたがない、という認識です。

2015年1月24日 (土) 22時52分 です。
お返事頂いていたようで有難う御座います。
私も運営はその道のプロが舵取りした方がいいと思います。
その方が棋士にとっても良いように思います。
これからの時代は尚更。

あれ?読み直して見たら逆にもとれる。
「その道のプロ」は「マネージメントの責を全うした実績のある、その手の手腕がある人物」
の意です。

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